ふたばの日記

高等教育や学術政策に関心がある大学生のブログです。考えたことのメモなど。

セーフティネットとしての産業の崩壊

 ここ最近、高度成長期くらいからの社会構造の変化と、地方と経済の問題についてあれこれ考えている。というのも、高等教育のあり方を考える上で、これらの問題をきちんと視野に入れておくことは重要だと思われるからだ。もっと言えば、大きな構造を理解することを怠っていると、部分システムの部分最適に寄与することができたとしても、結局それが全体最適にはつながらず、むしろ衰退の構造を強化するということにもなりかねないからである。そういう観点からふと考えたのが、セーフティネットとしての産業の崩壊である。少々とりとめのない文章になる。

1.ヤクザの衰退

 それほど詳しく情報を追っていたわけではないのだが、先日山口組の分裂の話が話題になった。その要因の一つとして、以前のようにシノギが上がらなくなったということを目にしたことがある。従来ならば上がってくるものを下に配分するような機能を持っていたものが、むしろ下から上に資金が吸い上げられる形になってきているらしい。分裂はこれだけの要因ではないだろうし、また資金が集まらなくなっているとして、それがどのようなメカニズムで変化してきたのかについては詳しく知らないが(警察の取り締まりや法律の関係も当然あるだろう)、少なくとも事象としてヤクザが衰退してきているというのは事実として見ていいように思う。

2.低学歴の職種の衰退

 加えて、いわゆる低学歴の職種がかなり厳しくなってきている。例えば、トラック運転手、タクシー運転手、鳶職、町工場、自動車整備士、建設業などである。かつてであればそれなりの収入を持って家庭を支えることや、後輩に振る舞いをすることが可能であったこれらの仕事について、今ではもうそういったことがかなり厳しくなってきているとの話を聞く。

3.その帰結

 これらのものは、学校で構造が序列化された社会のなかで、「学校」に親和性の低い人々が生きていくためのセーフティネットとして機能してきたように思う。しかし、こうした「学校」に親和性が低いものたちが働く場は、徐々に崩壊しつつあるのではないだろうか。それに加えて地方における産業の変化についても重要な論点であると思われるが、こちらは長くなりそうなので別の機会に書くことにして、こうした再生産構造の崩壊を踏まえた上で職業教育としての高等教育機関のあり方を考える必要があるように考えている。

 このあたりに目配せをしておく必要があると思うのは、ヤクザはひとまず別のものとしても、低学歴の職種の衰退はトランプの登場とBrexitの成立に関わっていると考えているからである。石炭、鉄鋼、自動車産業を中心とした産業の衰退による雇用の悪化、あるいは悪化まで行っていなくとも、将来に対する不安がある程度投票行動に影響を与えたと思われる。日本のような「保守」が政権を握っているところで同様の事象が起こりうるのかは何とも言えないが、少なくとも社会の分断につながり、それはあまり好ましいことではないのだと私は考えている。

 分断の影響で言えば、詐欺の興隆はある程度そうしたセーフティネットとしての産業の崩壊が背景の一つにあるのかもしれない。詐欺を正当化するつもりは全くないが、崩壊した再生産の構造に絶望したものが、詐欺を行うことは正当な行為なのだという論理を受け入れるその気持ちは、ある程度理解しうるように思われる。