ふたばの日記

高等教育や学術政策に関心がある大学生のブログです。考えたことのメモなど。

都道府県立中高一貫校!?

 先日、なんとなく興味を持って全国の有力高校の立地について調べていたのだが、そこで「○○県立附属中学校」のような、都道府県立の中高一貫校を多く目にした。中高一貫校といったら私立のイメージが個人的には強くて、案外多くありそうなことに非常に驚いた。よく考えてみると、最近は公立の中等教育学校について耳にすることも時々ある。

 加えて、私学に対する公立の復権や、ICTや教育手法の転換に伴う共通スキルの育成のためのカリキュラム改革、SSHやSGHなどのプロジェクト型学習などの背景から、昨今では一貫教育の意義はより高まっていると考えている。反面、優秀な人材を囲い込んで資源投下して、社会的分断を深刻にするリスクもあるだろうとの懸念も同時に持っているのだが。

 そんなことで、今回は公立中高一貫校の現実について、文部科学省の学校基本調査をもとにデータをまとめてみることにした。深く考察をできるほど関連知識を持っていないので、単なるデータの紹介になってしまうが、普段あまり目を向けないであろうことについて現状を把握するだけでも意義はあることに思う。

1.叫び

 読むのが面倒で後回しにされると残念なのではじめに二つだけ書いておく。

(1)セルを結合していないし、スペースを入れてもいないのにはじめの文字が二つ隣くらいのセルに表示されるのはなぜなのだあああああああ

(2)「平成20年」を「"平成"G/標準"年度"」という文字表示の設定で表示しようとするのはやめろおおおおおおお

2.活用データと定義等

2.1.活用データ

 学校基本調査、平成12年度~平成29年度速報版。本当は学生数まで確認したかったのだが、学生数のデータはないようなので、学校数のデータのみを活用した。また、本校/分校や全日制/定時制/併置など小区分はあるが、他のものは数が限られるため基本的に本校かつ全日制のデータとみなしても問題はないと思える。公立と都道府県立で若干の差異があるときは、大体が市(区)立のものが要因となっている。

 なお、公立中高一貫校は平成11年4月の「学校教育法等の一部を改正する法律」によって制度が創設された。*1

2.2.用語の定義

今回のデータにおける「中等教育学校」、「併設型中高一貫校」、「連携型中高一貫校」とは次の通りである(出典:中高一貫教育Q&A:種類・制度・入学に関すること:文部科学省)。

中等教育学校

<1>中高一貫教育を実施することを目的とする新しい学校種として設けられたものであり,学校教育法において,その目的,目標,修業年限,前期課程と後期課程の区分等について規定しています。
<2>中等教育学校の教育課程については,前期課程は中学校の基準を,後期課程は高等学校の基準をそれぞれ準用するとともに,中高一貫教育校として特色ある教育課程を編成することができるよう教育課程の基準の特例を設けています(特例についてはQ15を参照)。
<3>中等教育学校への入学については,設置者の定めるところにより校長がこれを許可することとし,この場合,公立の中等教育学校においては学力検査を行わないこととしています。

・併設型中高一貫校

<1>学校教育法において,中等教育学校に準じて,同一の設置者が設置する中学校及び高等学校において中高一貫教育を行うことができることを規定しています。
<2>併設型の中学校・高等学校の教育課程については,中学校の基準及び高等学校の基準をそれぞれ適用するとともに,中等教育学校と同様の教育課程の基準の特例を設けております。
<3>併設型中学校への入学については,設置者の定めるところにより校長がこれを許可することとし,この場合,公立の併設型中学校においては,学力検査を行わないこととしています。また,併設型高等学校においては,当該高等学校に係る併設型中学校の生徒については入学者の選抜を行わないこととしています。

・連携型中高一貫校

<1>学校教育法施行規則において,中学校及び高等学校においては,高等学校又は中学校における教育との一貫性に配慮した教育を施すため,当該学校の設置者が設置者間の協議に基づき定めるところ(設置者が同一の場合には設置者の定めるところ)により,教育課程を編成することができるとともに,当該中学校及び高等学校は,両者が連携してそれぞれの教育課程を実施することを規定しています。また,中高一貫教育校として特色ある教育課程を編成することができるよう,教育課程の基準の特例を設けています(特例についてはQ15を参照)。
<2>連携型高等学校における入学者の選抜は,設置者間の協議に基づき、編成する教育課程に係る連携型中学校の生徒については,調査書及び学力検査の成績以外の資料により行うことができるとしています。

3.データ集計

3.1.時系列変化

f:id:futaba_szk:20171004034324j:plain  平成11年からの時系列変化を見てみると、平成11年には17校であったのから、平成29年には621校にまで伸びている。高校数が大体5000校であることを考えると、10数%で、10校に1つより少し多いくらいの学校が中等教育学校あるいは中高一貫校であることがわかる。内訳を見てみると、校数の伸びの多くを占めるのは併設型中高一貫校で、一般的な中高一貫校のイメージと一致するのではないかと思う。

f:id:futaba_szk:20171004034335j:plain  次に、設置主体別に見てみると、平成29年には私立が408校、公立が208校、国立が5校となっている。私立が多くの割合を占めていることや、国立の数が少ないことはイメージ通りだろうが、案外公立の中高一貫校が多いことがわかる*2

f:id:futaba_szk:20171004034343j:plain  ここで、すべての設置主体のなかから、都道府県立のものだけを取り出して見てみる。公立の校数と若干の違いがあるのは、先述したように主に市(区)立のものが少々あるのが主な要因である。さて、数の推移を見てみると、数の変化が起こったのは平成12年から平成22年にかけての10年間くらいで、その後はやや数の増加が落ち着いていることがわかる。どうやら、今になって都道府県立の中高一貫校が増えているのかもしれないと思ったのは、単純にその情報にアクセスできていなかったからであるようだ。

 また、内訳を見てみると、全体の傾向として併設型が多かったのと対照的なことに、こちらでは連携型の割合が高くなっている。どうやら、併設型が中心の私立と連携型が中心の公立というように、傾向に差異があるようである。

3.2.都道府県別

f:id:futaba_szk:20171004034352j:plain  次に、都道府県別に見てみると、予想通り東京が突出して多く、137校となっている。平成28年は全体で604校なので、全国の23%程度が東京にあることになる。続いて、神奈川、福岡と大都市圏が続くが、茨城や長崎なども上位に入っているのが特徴的である。また、中等教育学校、連携型/併設型中高一貫校のいずれを置くのかも地域的な特徴がありそうである。そこで、中等教育学校の比率が高い順に並べ直したものを見てみる。

f:id:futaba_szk:20171004050421j:plain  すると、新潟と愛媛は中等教育学校の比率が6割を超えていることが特徴的である。また、都市圏では6-15%の中程度の比率に集中している。ただし、それぞれそれほど校数が多くないので、傾向をどう考えるかは検討の余地があるかもしれない。

f:id:futaba_szk:20171004050432j:plain  国公立(とはいうものの国立はほぼないため実質ほとんど公立)と私立という設置主体の区分で考えてみると、校数が少ないところはブレが出るが、概ね人口が少なめの県が国公立中心、多めの県が私立中心になってくる。これは、中等教育学校中高一貫校がどうというよりも、単純に私立学校が経営し易い場所であるかということが要因として考えられるだろう。

f:id:futaba_szk:20171004034419j:plain  最後に、都道府県別に都道府県立の中等教育学校中高一貫校について検討してみた。全体の傾向と比べると東京の数の多さが顕著ではなくなり、また新潟、長崎、高知、福島、和歌山、沖縄といった地域も上位に上がってくる。その内訳を見てみると、先程注目した新潟(88%)と愛媛(100%)の中等教育学校の比率が極めて高くなっている。

4.最後に

 まだ他にも人口との比較や、全体の学校数との比較などやってみたいことはあり、上の結果だけで明確なことがどうこう言えるほどでもないが、少なくとも公立の中等教育学校中高一貫校はそれなりに存在するようになっており、しかもそれは最近始まったことではなく、平成22年頃にかけてはもう大分進んでいたことがわかった。こうした公立の学校がどのような影響をもたらすかは、今後より検討していきたい。

*1:文科省のHPが迷宮と化しているので間接的な情報しか辿れなかった。というか、辿るのがめんどくさかったとも言う。資料3:公立中高一貫教育校の入学者選抜における「学力検査」の取扱いについて(意見):文部科学省

*2:とはいえ、各自が抱いているイメージは、当然暮らしている地域に応じて差異があるだろう。