ふたばの日記

高等教育や学術政策に関心がある大学生のブログです。考えたことのメモなど。

箕面市調査と教育研究の可能性

 ここ最近、箕面市の調査が自分のTwitterのタイムラインで話題になっていて、どういうことなのかと思っていたのだが、どうやらこれ(「貧困状態の子どもの学力は10歳を境に急激に低下」-日本財団ブログソーシャルイノベーション探訪)のことであるみたいだ。先日、日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラムフォーラムというイベントが開催されて、そこでそうした研究に関する発表があったらしい。

1.調査の概要

 この研究は、「箕面市が子どもの貧困を支援するために構築した『子ども成長見守りシステム』により、箕面市に住む0歳から18歳までの全ての子どもを対象に、2014年上半期から2016年下半期まで3年間にわたって集められたデータを日本財団が分析した」もので、「市の個人情報保護条例で目的外使用が禁止されているため、条例を改正し、心身の保護、生活の維持の目的に限定して目的外使用と外部利用提供を認めるようにし」て、「市役所内で散在しているデータを一覧できる形に」することによって実行されたとのこと。(上記Webサイトより)

 確かに、研究者だらけのタイムラインで話題になるだけあって、興味深いと思いながら上記の文章を読ませてもらった。興味深いと感じたのは、調査結果というよりもその手法に関してである。

2.箕面市調査の社会的意義

(1)これまでの調査の限界

 これまでの教育調査では、概して①サンプリングの問題、②個人情報保護の問題、および③情報連携の問題、が多く存在してきた。まず、限られた研究資金のなかでは、あるいは研究の協力者の募集の観点から、ある程度の学校数に調査対象を限定しないといけないというのは多く生じてきた。次に、調査を行ったとしても、その結果が個人情報保護の問題から、行政/研究者内で限定されるということが行われていた。その筆頭が全国学力調査で、最近は若干外部研究者に開かれてきたものの、まだ限定性が高いように思っている。このように調査データがあまり効率的に活用されてこなかった。最後に、これも個人情報保護の問題と関わるが、教育データをするときの周辺データを取るということが難しかったし、別の調査とリンクさせるということはほとんど行われてこなかった。

(2)箕面市調査の意義

 上記の点を踏まえて箕面市調査を見ると、0歳から18歳までという広い年齢階層に対して、全数調査を行うことができたという点に第一の意義がある。そして、条例改正によって目的外使用と外部利用提供を認めるようにして外部研究者に分析を依頼できるようにしたという点に第二の意義、それに加えて市役所内のデータを一覧化したことに第三の意義がある。

 これまでの調査を踏まえると、行政と議会がきちんと動くことが可能であれば、以前課題になっていた点は解決できるという事例を示したことにこの調査の意義があると考えている。

3.箕面市調査の課題

 以上のように、この調査に大きな意義があると認めた上で、細かい疑問点を書いておくと、例えば「平均偏差値」とは何を示しているのか「家族への相談の可否」は非認知能力の概念として適切なのか、などがある。とはいえ、こうした細かいことは詳細な報告書が作成されれば自ずと明らかになってくると思うので、続報を待ちたい。また、仮に調査方法に多少の問題があるとしても、ある種の「相場観」を明らかにしていくという点では意義があるだろうし、それを踏まえて箕面市であれ他地域であれ、より精密な調査が行われていくことに期待したい。