ふたばの日記

高等教育や学術政策に関心がある大学生のブログです。考えたことのメモなど。

平均化されることで見えない格差:北海道を例に

 先日から、北海道の釧路における教育格差について、とある記事が話題になっていた。

「底辺校」出身の田舎者が、東大に入って絶望した理由(阿部 幸大) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 この記事についてはいくつも反論を述べる研究者がおり、私も多くの方が指摘している事実認識に加えて、

(1)先験的に自身の過去が「底辺」として、逆側を善と見なしてしまっていいのか(議論を単純化するためにそうするのは理解できなくもないけれど…)
(2)本人の当時の経験と現在の現実がどれだけ持続して/変化しているのか

の二点が気になるので、あまり書かれたままには受容できないと考えている。

 とはいえ、このようにいくつかそのまま受け止めることが難しい点はあるものの、地域あるいは階層による教育の格差があるという一般的な主張については同意できるということで、今回は北海道の大学等進学率の格差について簡単に見てみようと思う。ということで次の図である。

f:id:futaba_szk:20180506174743j:plain 図表1:北海道自治体別大学等進学率

 データは平成29年度学校基本調査によるもので、地理情報分析のフリーソフトであるMANDARAを利用した。本筋とは関係ないが、いじってみると結構面白いので、使ってみると楽しいと思う(MicrosoftのOfficeの最新版では地理情報分析の機能が入っているらしいけれど…)。

 地域間の高等教育について語られるとき、都道府県別の大学等進学率について参照されることが多い。これは現在も審議が進行中の、中央教育審議会将来構想部会でもそうである。(例えば、わかりやすいのでは将来構想部会(第9期~)(第1回)_参考資料1 高等教育の将来構想に関する参考資料1/3, p. 11

f:id:futaba_szk:20180506180025j:plain 図表2:将来構想部会(第9期~)(第1回)_参考資料1 高等教育の将来構想に関する参考資料1/3, p. 11

 この図のように、都道府県で見ると4年制大学と短期大学への進学率が40数%程度で、確かに他の地域と比べても低い部類にはあるものの、「2人に1人弱が大学や短期大学に進学している」と考えると、それなりに進学率もあると感じられるかもしれない。

 しかし、都道府県の平均というところがポイントで、ここで冒頭の図である(再掲)。

f:id:futaba_szk:20180506174743j:plain 図表3:北海道自治体別大学等進学率(再掲)

 上の図では、平成29年度の北海道の大学等進学率が44.5%ということで、それよりも高い地域が赤系統、それよりも低い地域が青系統になっている。(作業が面倒なため高等学校卒業生が0の地域も、大学進学率が0として含まれてしまっていることは見逃していただきたいです。ごめんなさい。)ちなみに、大学等進学率は概ね4年制大学もしくは短期大学への進学率と考えればよい。*1

 すると、道の平均値よりも高い地域は、札幌市、石狩市江別市北広島市千歳市美唄市滝川市旭川市滝上町北見市帯広市利尻町に限られると分かる。そして、3割や2割を切る地域も多く存在することが分かる。話題の釧路市(右下の白い部分)は40.8%であるが、その周辺の釧路総合振興局の町村部では平均して17.2%となっている。正直、データで見るまで私には想像し難かった。

 なぜこのようなことが起こるかというと、北海道の人口が5,370,807人(平成29年住民基本台帳人口・世帯数(平成29年1月1日現在))であるのに対して、札幌市の人口が1,947,494人(同上)で、北海道の36.3%が札幌市という大都市に極端に集中しているからである。人口の大半を占める大都市で大学等進学率が高いことで、都道府県全体の平均値としてもその数値に引っ張られてしまう。

 おそらくこういったことは北海道に限られたことではないであろう。そこで、都道府県という単位で進学率を考えるのではなく、自治体単位で細やかに見ていく視点も重要なのではないかと思われるのである。

*1:なお、「大学等進学者」については、平成30年度学校基本調査の手引(高等学校)にて、「大学(学部),短期大学(本科),大学・短期大学の通信教育部(正規の課程)及び放送大学(全科履修生),大学・短期大学(別科),高等学校(専攻科)及び特別支援学校高等部(専攻科)へ進学した者及び進学しかつ就職した者」と定義されている。平成29年度のものは確認できていないが、恐らく同様だと思われる。