ふたばの日記

高等教育や学術政策に関心がある大学生のブログです。考えたことのメモなど。

Times Higher Education / Benesseと日本大学ランキング(2018年度版)

 2017年度版が発表されたときにわりと詳しく記事を書いたのだけれど(Times Higher Education / Benesseと日本大学ランキング)、少し遅くはなってしまったが今年もTHEの大学ランキング日本版について書いておくことにする。

 今年の話題になったのは京都大学東京大学と同スコアで首位に立ったことであったが、どうせTHEだからウェイトを変えて順位を変えたのだろう*1と思っていたら、まさにその通りであったので笑ってしまった。いい加減にしてくれよという気持ちが半分と、まあ二年目だしという気持ちが半分と、何とも言えない気分である。

 スコアに関する疑念は概ね前回と同じなので、今回は前回は指摘しなかった点に絞っておく。

0.前提:ウェイト変更一覧

領域(2017年度→2018年度) 指標
A.教育リソース(38→34%) (1)学生一人あたりの資金(10→8%)
(2)学生一人あたりの教員数(8%)
(3)教員一人あたりの論文数・被引用回数(7%)
(4)大学合格者の学力(6%)
(5)教員一人あたりの競争的資金獲得数(7→5%)
B.教育満足度(26%) (6)高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視(13%)
(7)高校教員の評判調査:入学後の能力伸長(13%)
C.教育成果(20%) (8)企業人事の評判調査*1(7→10%)
(9)研究者の評判調査(13→10%)
D.国際性(16→20%) (10)外国人学生比率(8→5%)
(11)外国人教員比率(8→5%)
(12)日本人学生の留学比率(0→5%)
(13)外国語で行われている講座の比率(0→5%)

1.教育リソースにおける医科系バイアス

 昨年度も指摘したことだが、相変わらず医科系が顕著に上位にランクインしていて、どう考えてもこれは指標に由来するバイアスとしか思えないのだが、一年経っても修正はしなかったのかと思ってしまった。

2.企業人事の評判調査(教育成果)

 「(株)日経HRによる『企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査』」を利用しているとのことなので少し調べてみたら、2017年度の調査では調査対象が「2017年2月現在の上場・非上場の有力企業」で、回答は「847社(調査対象4701社/回答率18.1%)」だったらしい(出典)。これかなりバイアスかかるよなあ。

3.研究者の評判調査(教育成果)

 研究者については、「『THE世界大学ランキング』において高等教育機関研究者を対象に『教育力の高い大学』を調査」とのことらしいが、この時の「教育力」はどういう観点なのだろうか。研究者養成という観点だとそんなの養成していない大学の方が多いだろうし、かといって研究者に限らない人材育成という観点だと、そもそも他大学の教育力について認知していることはそれほどないだろう。

4.日本人学生の留学比率(国際性)

 えと、そもそも自学の所属学生を留学させるというのは、自学の内部だけでは十分な教育システムが整備しきれていないと解釈することもありうるかと思うのだけれど、それを指標に入れていいものか。米国のエリート校とかそんなに留学しないじゃない。別にそれを真似るべきとは言わないけれど、安直に留学をさせるのが良いこととして指標に組み込むのは疑問に思う。

5.評価の単位

 教育の質に焦点を置いてランキングを作るのならば、大学の単位ではなくて学部の単位で比較をするのが合理的なはず。多少の効果はあるのかもしれないけれど、不利益に比べて利益が多いのかと言われると怪しいように思う。教育リソースなんてまさにそうだし、国際性も概ね大学の学部構成に左右されているし(逆に大学として全然なのに、一学部のおかげで指標が上がるのもありうる)、本当に選択に資するランキングを作るには、学部単位で比較をした方がいいのではないか。

*1:本家THEはウェイトが変わって順位変動するのでベンチマークに使えないよね、というのは界隈的にはあるある話なのです。笑